都市も田舎もトイレをオフグリッドできる。トイレの自給と完全自己処理型水洗トイレ「TOWAILET(トワイレ)」

Pixabayより

電気をソーラーパネルなどで自家発電して自給自足することをオフグリッド、すなわち公共の電力送電網(グリッド)から自由になることを言いますが、特に国外においては、電力のみならず水やガスなどのライフラインを自給することをも意味します。

しかしオフグリッドできるのは資源の利用だけではありません。廃棄についてもオフグリッドできます。資源は使った後は廃棄しなければなりません。例えば紙のゴミなら燃やせるし、生ゴミは堆肥にできる、ではトイレはどうだろう。

汚物もコンポストトイレによって堆肥化ができますが、では都会ではどうでしょうか。後述しますが都会で堆肥化しているところもあります。しかも無臭で。しかしハードルが高いことは否めません。下水システムの発展によって見えなくされているものの、僕たちの生活からトイレを断ち切ることはできません。なのでちょっとトイレについて語りたいと思います。

そんな現代日本に下水システムに依ることなく汚物を自己処理できる水洗トイレが誕生し、すでに災害の現場で活躍しています。本年2018年の後半に一般発売控えているそんな最新のトイレから話を始めたいと思います。

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完全自己処理型水洗トイレ「TOWAILET(トワイレ)」

きっかけは大震災

水洗にも関わらず、上水道にも下水道にも繋がっておらず、汚物処理は自ら行い、それに必要な電気すら発電してしまう。

そんな夢のようなトイレがその実力を発揮したのが、平成29年9月~11月の九州北部豪雨のボランティアセンターでのこと。沢山の人が利用する状況下において、従来の汲み取り式とは違う、水洗の仮説トイレが過酷な作業に従事するボランティアの人たちのストレスを和らげたことは想像に固くありません。もともとこのトイレの開発がきっかけとなったのは2011年の東日本大震災だそうです。

「TOWAILET(トワイレ)」の仕組み

トワイレが汚物を完全自己処理できるのは特許出願中の浄化処理技術にあります。

まず水で流された汚物は徹底的に細かくされ、さらに微生物の力を借りて、分解されるまで繰り返し処理されるので汲み取りは一切不要。生物処理のために木質チップが使われますが、従来式と違ってチップの交換すら不要。

高性能なフィルターによって不純物や大腸菌などを取り除き、最終的に排泄物は無色透明で無臭の水と二酸化炭素に分解されます。

その水は次なる洗浄水として循環利用されるため、上下水道がいらないのです。一番最初の洗浄水のみ給水する必要がありますが、それ以降は自立して稼働を続けます。

驚くべきことに一日300回以上綺麗な水で利用できる設計となっており、10年使っても汚泥がほとんどでないそうです。

稼動状態や緊急呼び出しのはPC上で確認できるようになっており、寒冷地においては水の凍結や、微生物の活性のためにヒーターが利用されますが、それら稼動に必要な電力はソーラーパワーとリチウムイオン電池によって自給されます。

このトイレは災害現場のみならず、イベント会場はもちろん、大挙して人が押し寄せることでその保全に苦慮している観光地、特に自然景勝地においての活躍が期待されています。

しかし僕はこのトイレの技術を一番必要としているのは平常時と緊急時とに関わらず、都市においてではないかと思うのです。

都会のトイレは無駄が多い

僕たちは1日たりとも排泄をしないことはありませんが、トイレの水を流した後のことは多くの人たちにとって「なかったこと」になっていませんでしょうか?

もちろんトイレを流したら汚物はどこかに消えてしまうわけではありません。

それが下水道を通って流れていこうが、浄化槽からし尿処理施設に汲み取られていこうが、どちらにせよはるばる遠くに汚物を運んだ上、燃料を使って浄化処理をし、最終的には河川や海に放流されています。

下水処理施設、浄化槽ともに微生物が大活躍していますが、それでも薬品を使って消毒処理をしていますから、それら薬品は自然界に流されているということになります。

近年では地産地消やEat Localという言葉が一般に認知され、「余計なエネルギーを消費して遥か遠くから運んできた食品」を食べるのではなく、地元産品を買い求めたり、家庭菜園などで自家栽培をする動きが広まっています。

それは食品に限らず、冒頭に述べたようなライフラインもしかり、そして、排泄物処理もしかりです。自給するということは、常に地産地消です。遠くからの物に頼ることなく、遠くの誰かを犠牲にすることもありません(原子力のように)。

わざわざ汚物を遠くの下水処理場やし尿処理施設に運ばないで、トイレをしたその場で処理してしまうのが一番効率良いに決まっています。

都市におけるトイレの地産地消

昔はその辺で用を足しても土に還るし、人も少なかったから問題なかったことでしょう。しかし人口が集中すると大地の自浄能力は間に合わなくなり、さらにコンクリートで覆われるともうダメです。

そこに近代人の衛生観念が重なり合って、汚物を遠く遠くへ運んで見えないところで処理する社会を作ってきましたが、トワイレのような自己完結の処理技術がいつの日か一般家庭に普及すれば、大都会にあっても汚物は自宅で処理できるようになります。

エネルギー消費を節約できるし、水資源への負荷も少ないことでしょう。そして汚物を水として循環的に再利用できるし、自らが食べた食事のお釣りを自ら処理するという責任を果たすこともできます。

これはもしかすると未来の都市のスタンダードになる可能性すらあると予感しています(ただの希望かもしれませんが)。家庭一軒づつでなくても、合併式の自己処理設備なんかも考えられるかもしれません。

さらに、この技術は浄水設備の整っていない国々にとっては一層切実な問題に違いありません。僕が訪れたインドの街などでは、直接トイレの排水が流れているのか側溝や運河の匂いがひどく、それが乾季と合わさるともう言葉になりませんから。

汚物は資源

しかし、汚物をトワイレのように水と二酸化炭素に分解してしまうのは最高最上の方法と言うわけではありません。

なにしろ尿も便も貴重な資源であるわけです。

江戸時代ではこれらを堆肥として畑に返すことは当たり前のことで、作物を生産することで大地から頂いた栄養を再び還元できますし、人口100万人をも超えた大都市・江戸において清潔に汚物を処理することにも繋がっていました。

例えば、尿には窒素とリンが豊富なので、それらは川に流す場合は富栄養化を引き起こす汚染物質となるので浄化しないといけませんが、大地にとっては栄養となるわけです。

わざわざ遠くに運んで汚染物質とするならば二つのマイナス。
それをすぐ近くで肥料として有効活用ができるんですから二つのプラスに転じます。

ならばそうしない手はないのではないでしょうか?

この辺で、それは江戸時代だからできたし、田舎ならまだしも都会では無理だろう?という意見が聞こえてきそうです。

確かに、田舎での方が楽なことはいうまでもありません。

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しかしアメリカでは住宅街やアパート暮らしでも汚物を敷地内で処理している人たちがいます。

都市における汚物利用の可能性

尿はそのままだと強いので(同じところに立ち小便を繰り返すと草が枯れます)、水で1/10に割って畑にかけます。これをアパートでやっている人もいますから流石は愚直なアメリカ人だなと思うわけです。

アメリカの強さの秘訣があるとしたら僕はこの点にあるといつも思っています。ちなみにおしっこはペットボトルに貯めておくわけですね。

では大便はどうかというと、これも住宅街においてコンポストトイレを使って堆肥化してしている人たちがいます。コンポスト(堆肥)作りは窒素と炭素のバランスさえ間違えなければ悪臭を発することはありません。実際その現場に行っても全くの無臭です。

トイレの便座の下が取り外し式のバケツになっていて、用を足すたびにおが屑(炭素)を入れます。そして溜まったらコンポストステーションに持っていく。生ゴミのコンポストとは別で用意します。そして出来上がったコンポストは畑に使われ、新たな食料として食卓に戻ってきます。

畑、食卓、トイレ、堆肥、畑、食卓、トイレ、堆肥と循環するわけです。

これは野性の環境であれば当たり前のこと。動物の糞や屍骸、食べ残された果物、木ノ実、堆積した落ち葉、枝、倒木、、、これらは腐敗して堆肥化されては次の命へ繋がっていくので、何も持ち出されず循環していきます。それこそパーフェクトな世界として均衡を保っている状態が、原生林など、ウィルダネスに見られる環境と言えるでしょう。

人間社会が産業革命以降急速に発展することができているのは、その地球の豊潤とバランスを奪い続けているからと言えます。

大地を開墾して多くの栄養を失い、野菜を生産して大地の栄養を吸い取り、その野菜を食べた後の便を栄養として畑に返すことなく海へ流し、海は汚れ、生態系は崩れる。こうして栄養を吸い取られた大地は農薬を加えることでなんとか野菜を生産することができても、その農業排水は再び川や海を壊していくし、その農薬を扱う農家の健康や、野菜を食べる僕たちの健康も脅かされます。

話がどんどん大きくなっていきますが、それほどに現在のトイレの在り方は社会において大きな問題を抱えていると思うのです。健全なトイレの仕組みを取り戻すことは、多くの場所で絶たれている生態系の循環を再びつなぎ合わせる可能性を持っています。

田舎に行くほどトイレは簡単になる

自らを糞土師と名乗り、日本中で野糞をしてきたうんこ研究の第一人者、伊沢正名氏もやはり都会での野糞に苦労しています。それはそうです、都会には茂みが少ないですからね。排尿においてもかなり苦労しますから、大便はレベルが高い。

一方、田舎では小便くらいなら簡単です。ランニング中に尿意に襲われても困ることが少ない(男の僕としては)。都会ならコンビニがあるじゃないかと言われればそれまでですが、やはり大地にしっかり還せている現実には代え難いものがあります。

男なら小便は外でする。これだけでも社会は大きく進歩すると思われるのは僕だけでしょうか。

トイレを難しく考えない

一般的にはトイレは下水処理施設やし尿処理施設を巻き込んだ壮大なシステムになっていますが、必ずしもそうではありません。もっと簡単で良いのです。

登山をする人ならわかるでしょうが、一度限りのトイレであれば作るのだって簡単です。僕だって何度となくトイレを作ってきました。何しろそれは

軽く穴を掘って埋めるだけです。

埋めた方が分解が早いですし、むき出しだと他の登山者を不快にしてしまうかもしれませんから。樹木の根が張り巡らされていて掘れない場所でも、土や落ち葉などの有機物を被せてやることを忘れずに。

しかしいくら土地が広大にあったとしても毎回穴を掘っていては大変ですし、そのうちどこを掘っていいか分からなくなるでしょうからもう少し恒久的なトイレを作る必要が生じてきます。

それに、利用する人が多ければ多いほど、効率よく処理しないと汚物で溢れかえってしまいますからね。

先ほど説明したようなバケツ型コンポストトイレは田舎でも有効ですが、田舎ならではの方法もあります。

移動するトイレ

例えば僕がアメリカはワシントン州の農場で見てきたコンポストトイレは、地面に穴を掘ってその上にトイレ小屋を設置するという仕組み。排便後にはオガクズを入れて堆肥化を促進し、匂いを止めます。そして穴がいっぱいになったら、別の穴を空けてトイレ小屋を移動するわけです。

トイレの周囲には果樹が植えられており、穴の中でできた堆肥の養分をふんだんに吸収してたわわに実った果実が鈴なりに実っています。トイレを設置するのは栄養を必要としているところ。堆肥が必要なところにトイレを作るのです。人間とトイレが移動すれば出来上がった堆肥を移動する必要がないというわけ。

シェルパ族のトイレ

また、ネパールのシェルパ族の知り合いを訪ねたときのトイレも非常に感動的で、これは今だに僕の中で最高のトイレだと思っています。

家の前のちょっとした斜面に高床式のトイレ小屋がありまして、トイレの扉を開けると床には穴。真ん中に一本、床板がなくて地面が見えています。そして床下には落ち葉が積もっています。その空洞を跨いで外に便を落としてしまうわけですが、用を足した後は小屋内に無造作に入れてある落ち葉を便を隠すように落とします。

トイレ小屋の下には落ち葉に包まれるように便の山ができるわけですが、それらは堆肥として利用されるわけです。僕もそれなりにいろんなタイプのトイレを使ってきましたが、このトイレが一番臭くなかったように思います。もちろん水洗トイレも含めてです。水洗トイレは独特の臭みがありますでしょう?

終わりに

トイレを自給するということ、それは、緊急時の備えでもあります。食料や水は備蓄できますし、電気は電池、ガスはカセットボンベとして備えておくこともできます。自家発電を導入していればさらに心強い。

しかしトイレはどうしましょう。大地震が起きたら水道管が破裂して水が使えないかもしれませんから、お風呂の水が残っている限りしかトイレは流せないかもしれませんし、特にマンションなどでは下水管が破損している可能性があるから流さないほうが良いです。

震災の時に一番苦労したのはトイレだと言われていますが、確かに水と食料はなくても数日は持ちますが、便意はいつ襲ってくるかわかりません。しかも都心部での震災であれば、なおさらトイレに困ることでしょう。

そんな時にトイレを自給できるということ、ないしは、汚物がどのように処理されるべきかを知っているだけで、かなりのストレスを回避できるはずです。

結局のところトイレ問題とはサバイバルの問題なんだと思います。

緊急時のサバイバルとしてもそうですし、破壊される地球環境のサバイバルもそうです。

僕たちの文明の存続はトイレ文化のさらなる発展にかかっていると言っても良いかもしれません。適切に処理することで地球の環境と生活環境を守り、災害からも身を守る。

江戸時代で汚物の循環を既に達成し、近代ではウォッシュレットの普及や便座が自動で開くなど、トイレの最先端を切り開き続けてきた我が国日本が、未来のトイレ文化を花開いていく大いなるポテンシャルを持っているのではないかと密かに期待しています。

 

 

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百姓2.0/自給リスト(自足に限らず);野菜、米、塩、味噌、建築、トイレ、経済、国家、獣肉(拾い物)、書籍、映像、音楽 etc /自著『旅をふりかえる旅』https://amzn.to/2Wb1mNs、『下らない生き方』https://amzn.to/2ZEjgKf /
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