【自著】旅をふりかえる旅

去る令和元年5月12日は旧暦4月8日であり、わかる人はわかる灌仏会、花祭り、すなわちブッダの誕生日。そんな日に、初めての出版をした。この場を借りて下書きを公開していた野宿遍路の回想録だ。お遍路の本だから灌仏会に出すことにした。まあ、たまたまなのだけど。

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旅をふりかえる旅: 四国八十八ヶ所・野宿遍路の記憶

商品説明

野宿遍路の経験をいつか自分なりに再評価したいと思い続けていたらあっという間に6年も経ってしまった。2013年の真夏に野宿で歩いた四国遍路。リアルタイムでは咀嚼しきれないほど濃密な35日間を6年越しに振り返る。

すでにスマホ時代に入っていて、簡単に地図や情報にアクセスできるようになり旅そのものの定義が変わり始めていた当時、僕は携帯回線を解約して電池も切れたiPhoneと共にオフラインで四国を歩いた。そこでの経験は全て日々したためていたわずかながらの日記を除いては、全て僕の目に焼きつき、耳に残り、脳裏を漂っている。それらを振り返ることで新たな思考に出会うという心象の旅路の記録が本書である。

過去を振り返ってはいるが、目線は未来にある。これからを生きるための思考の整理であると同時に創造だ。6年も経つとお遍路の鮮明さが失われているのではと思ったらそれは間違いで、当時の体験は現在の僕を形作っているし、むしろそれ以降の体験から得た知見によってついぞ言葉にできるような事も多いように感じている。

本書は、お遍路のことはもちろん、歩くこと、宗教、文化、自然、環境、地方創生など、この旅の経験があったからこそ得られた知見を自由に織り込んで綴った脱線型エッセイである。お遍路の話題から逸れ過ぎている章も多いが、お遍路というのは四国を歩いているようで、実は歩くものそれぞれの内面世界を歩いているのだと思う。

試し読み

どこの馬の骨かわからない人間の本を買うのも勇気がいると思うので、以下に本書からの抜粋をいくつか掲載しておこう。

三日目『托鉢と自尊心』 

遍路道沿いに暮らしている人にとってはお遍路たちの歩く姿は一つの風物のようになっているのかも知れないが、素性の知れない連中がさも高潔なことをしているような格好をして歩いているのだから、考えてみれば不気味なものである。

頭に笠を被った白装束姿の人間に一人夜道ですれ違おうものなら夏の夜のホラー番組のようではないか。その昔は道半ばで行き倒れる遍路も少なからずいたようで、白装束は直ちに死装束に変わる。目の前のお遍路は人間なのか、お化けなのか。

常に犯罪者の一人くらいは歩き遍路の真っ只中であるなんて話もある。遍路の格好をしていると警察に呼び止められることがないからだと。そのお陰で僕ら野宿遍路は警察のお世話になることなく安心して野宿をすることができるのでもある。しかしこの話を都市伝説だと訝しがったとしたらそれは間違いで、住み込みの手伝いをしていたお遍路が実は逃亡犯だったなんて実体験をお世話になった人から聞いたことがある。

五日目「自炊するということ」

車ではなく歩きで遍路するんだから、外食ではなく自炊で遍路をしたって良い。山の頂上に行くのにヘリコプターを使わないで登山道をボツボツ歩いて行くのと同じ。ゴールにたどり着くと言う物理的な結果は同じかもしれないが、僕にとってはその行為が僕自身の思考や経験としてどんな結果をもたらしかが重要だ。だから正直寺を回ること自体に対した意味があるとは感じないが、歩いて寺を回ることには大きな意義を感じた。

八日目『決めつけない事』

この脳みそに固着したイメージ、記憶、固定概念、習慣はモノの道理を軽々と踏みつけていって、個人や社会において正当性を獲得してしまう。ここには論理性というものは一切存在しておらず、言って見ればただの好き嫌いにすぎない。論理性がなくて良いのだから為政者としては簡単で、画一的な情報でマスメディアを埋めてしまえば、人々を先導したい方向に誘う事ができるわけだ。日本のメディアは為政者が民を操るための媒体でしかない。

いわばマジョリティの押し付けだ。女性蔑視から、LGBT問題から、ハーフの人が感じる日本での生きづらさから、日本はホームレスが少ないと思ったらネットカフェ難民としてなんとか「見えない化」されているような状況まで、どれもこれもマジョリティの優越感がさせていることのように感じる。

十一日目『道を歩いて思考を歩く』

バスが時速二〇〇キロメートルくらいのスピードで走っていたらバスガイドの説明も追いつかなくて半分になってしまうかもしれない。そういう意味では得られる情報量の観点からいうと、歩くている時がもっとも多いのではないだろうか。そう考えてみると、歩いている方がどんな移動手段よりも早いと言っていいかもしれない。

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ジャン=ジャック・ルソーは『孤独な散歩者の夢想』において「日々の散歩はしばしば、何かに心を動かされ、うっとりしてしまうような瞬間に満ちている」と言っているし、キルケゴールは『ジュッテへの手紙』で「歩くことで解決できないような厄介な思考を私は知らない」とまで言っている。エマニュエル・カントも毎日歩くことを日課にしていて、カントがどこどこに現れれば今は何時であるかわかるほどに正確なスケジュールだったようだ。哲学者は歩くのだ。いや、歩くから哲学があるのかもしれない。

十七日目『大師堂の奇跡』 

ついに奇跡が起きてしまった。

二十日目『様式美の先にある自由』

問題は見た目などどうでも良いと言っている人に、本当に中身が伴っているかということである。口だけで心が伴っていないかもしれない。何しろ外見は見えても、内面は見えない。証拠がない。これは他人の話だけではなく、自分自身で自分の内面と外面を観察しても同様だろう。自分の外見は鏡などで見えても、中身については自分自身でもわからない。だって自分の心なのにちっとも制御できないじゃないか。

二十二日目『「超私見的」四国遍路のお勤め解説二』

インドネシアの公共の場所で抱き合っていたカップルが公開むち打ち刑に処されたとのニュースがあった。この二十一世紀に?と思ったあなたはあなたの論理を生きていると言うことになる。その論理は、西洋的なもので、キリスト教的なものであるだろうか。しかし同時にこの世界にはイスラム教的な論理も並行して存在しており、そのイスラム教徒は確実に人口比を増やしている。東京の大久保にはイスラムストリートと呼ばれる道まであり、そこには彼らが宗教上口にできるハラルフードの店が並ぶ。さて、あなたはこの世界の動きについて行けるだろうか。

二十三日目『不動明王と熊』

『SMOKEY THE BEAR SUTRA』では大日如来の化身としての熊のスモーキーが環境破壊と資本主義、そして全体主義的世界を踏み潰しにやってくる様が描かれている。まるで開発に住処を追われ食料に不足した熊が時折人里に降りてくるようではないか。

人間社会に足を踏み入れる時、彼らは警告を発しているのだ。美しき山河が破壊されていることを。生態系が乱されていることを。安全な水や肥沃な大地が失われてきていることを。コンクリート、農薬、オイル、原発、それでいいのかと。今世紀末には人口が百億を突破する。飲める水と肥えた土の争奪戦が始まるかもしれない。我が国の水源はすでに外国資本に買われてきている。しかし君らはそれらを簡単に汚してしまっている。それでいいのかと。

その警告はほとんどの人には届かないようだ。熊の見た目に怯え、自らの恐ろしき行為に気づけない。熊への恐れは自分への恐れなのかもしれない。そして行政に通報された熊はハンター達によって射殺される。逃げろ、殺されるぞ。しかし熊は慈悲の怒りを持ってして最後まで諦めない。それでいいのかと。そしてbang, bang, dead。

三十二日目『最高気温記録と気候変動』

ヒッピーコミューンといえば大自然の中で営まれるというのは過去の話で、ドイツはベルリンのホルツマルクトのようにエコビレッジは都市型が増えてきた。ポートランドの都市型パーマカルチャー然り、デトロイトのアーバンファーム然り、都市と田舎を行き来する時代から、都市に田舎が現れるハイブリッドの時代へと変わって行くのかもしれない。

近い将来、東京でもビルの中での水耕栽培で食糧生産の多くを賄う時代が来るかもしれない。そうすれば生産コストはかかっても輸送コストは大幅に下がる。いずれにせよ、わざわざ水を海外から輸入するような行為はどう考えても滑稽にしか思えない。

都市がハイブリッドになって行くなら、田舎もハイブリッドに進んで行く必要があるのだろうが、それは都市化すればいいなんて安直な話ではないだろう。向こう十年二十年で急激に人口を減らして消滅して行く自治体が多かろうことを考えると、沖縄の離島のような特別性を持つでもしない限り生き残れないような気がしている。まるで個人が半農半Xになるように、自治体が半農村半Xにならなければならない。

そのXはAIを駆使した最新テクノロジー村かもしれないし、医療に特化しているかもしれないし、超超少子高齢化に合わせた福祉タウンかもしれないし、オーガニック都市的なものかもしれないし、もちろんスペシャルな景観を有する観光都市かもしれないし、世界の潮流に乗った大麻特区かもしれない。少なくとも変化を受け入れるのを拒否したところから潰れて行くのだろう。

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百姓2.0/自給リスト(自足に限らず);野菜、米、塩、味噌、建築、トイレ、経済、国家、獣肉(拾い物)、書籍、映像、音楽 etc /自著『旅をふりかえる旅』https://amzn.to/2Wb1mNs、『下らない生き方』https://amzn.to/2ZEjgKf /
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