県庁から10km!30km圏内に39万人が住む島根原発を訪ねて

地元掲示板サイトのジモティーで近所の耳寄り情報を漁っていると、太陽光温水器の無料譲渡があったので、直ぐさま譲り受けることを決め、その受け取りのために松江に行ってきた。

太陽光温水器とは、屋根に取り付けた黒い配管に水を通すことで太陽熱の力で温めてしまうものである。見た目は無骨なソーラーパネルのようで、田舎の家によく設置されている。

この装置が優れているのは太陽熱が直接水を温めること。電気もガスも介在せず、完全受け身であるが故、パッシブソーラーと言われる。一方のソーラーパネルは太陽光を使って自らが発電するアクティブソーラーだ。電気を作るのでその後はいろんな用途に使えるが、お湯を沸かす場合はいちいち太陽光を電気にしてボイラーを動かす必要があるので無駄が生じる。

いつか自作してみようとも思っていたので、不用品をもらえてなんとラッキーなことか。そして近くの中海の大根島で安くて美味い海鮮に舌鼓を打ち満足感に浸った。

その後、コーヒー屋に伺おうと車を走らせていると、松江には原子力発電所があることを思い出した。

僕もこの8月に晴れて島根県民となったので、島根の原発は見ておかなければならない。コーヒーを後回しにして原発に向かった。電気すら使わない太陽光温水器を荷台に乗せた軽トラで(笑)

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日本で唯一県庁所在地にある原子力発電所

ウィキペディアの島根原発の項の冒頭は以下を引用させてもらおう。

かつては「日本で一番都道府県庁所在地に近い原発」と言われていたが、2005年(平成17年)3月31日、所在地の鹿島町が松江市と合併したことにより、日本で初の都道府県庁所在地に立地する原子力発電所となった。

県庁所在地に原発があるなんて、その事実を知った時には驚いた。これで良いのか島根?と心配になるし、もちろん他人事でもない。しかし県庁所在地にあることだけではこの問題を語り尽くしていない。

いかんせん中心部からの距離が近すぎるのだ。

松江にある島根県庁から直線距離にして10kmほどしか離れていない。

しかも30km圏内には39万人が住んでいる。福島第一原発の30km圏内の人口が14.1万人であった事と比較するとその差は3倍近い。

聖地出雲大社はギリギリ30km圏の外であるが、ほとんど30kmだし、半径を50km圏に広げると、隣県鳥取の米子市、広島県の庄原市をも巻き込むような場所にあるのだ。福島原発事故においても50km離れた飯舘村で高い線量を記録したことはよく知られている

「東京の電気を作るのなら東京に原発を作れ!」

原発反対論の中で良く聞かれるこの言葉への電力会社のアンサーなのだろうか。もちろん人口が少ないところに作れば良いと言うわけではないのだが。

もちろん30kmや50kmなどの数字はあくまで管理上のものであって、これらが安全を保証するものではない。それはベクレルの基準値をいくらに設けるかにも当てはまる話だ。原発から29kmが危険で、31kmが安全なんてそんな単純な話であるわけがない。

また、遠く離れたところにホットスポットができる恐れもある。チェルノブイリの事故後に遠くは北欧のノルウェーで放射線量が上がったことは有名な話だ。千葉県の松戸市ではラッパー市議のDELI議員が松戸市内の全ての公園の放射線量を測ってホットスポットを発見している。

松戸市になると福島第一原発から200kmは離れている。島根原発から200kmとなると瀬戸内海まで余裕で届いてしまう距離である。

山陰地方は東北や北海道ほどではないが豪雪地帯と言える気候を持っている。冬場に原発事故が起きれば、シベリアからの湿った空気が中国山地を駆け上り、雪と一緒に放射能を撒き散らすなんてことも想像できてしまう。

僕が住んでいるところも原発から60kmくらいしか離れていない。そして雪が降る。なんの因果か福島の母の実家は原発から35km位のところだし、僕が北海道のニセコに住んでいた時は30km圏内だった。原発に縁があるのだろうか。いや、縁があるも何も、原発の電気を使って生きてきたのではないか。

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着々と工事が進む島根原発3号機

原発事故の前は、原子力災害に備えた防災対策を講じる重点区域の範囲が原子力発電所から8〜10km圏であったのを、事故後に30km圏に拡大したのである。

だから、島根原発がいままで説明してきたような立地にあるのも頷ける。しかし理解に苦しむのはその同じ立地に新しい原発を作っていることである。

今年2018年の8月10日には、島根原発3号機の新規稼働のための安全審査が原子力規制委員会に申請された。建設中の原発の申請は青森の大間原発に続き2例目の新規原発の申請となる。

僕が訪れた際も工事は着々と進んでいた。完成間近であるらしいことから、このまま話がスムーズに進んだら原発事故以降はじめての新規原発稼働となってしまう。

島根原発3号機の審査申請 中国電、規制委に

一方でこんな報道も流れている

中国電力島根原発(松江市鹿島町片句)で重大事故が発生した際の広域避難の受け入れ先になっている広島、岡山両県の49市町村のうち、8割の自治体が受け入れ計画の策定に未着手であることが19日、島根県の調べで分かった。

島根原発事故 受け入れ計画 山陽避難先 8割未着手

相変わらずであると言うのが第一印象。とりあえず作ってしまえと言う目論見が透けて見える。ハードはあるけど、ソフトが全く整備されていないのは日本が抱える常習的弱点である。

多くの受け入れ地域は経済的にも強い広島と岡山に当然ながら集中する。中国電力管内で原発が稼働されれば電気の恩恵を受ける地域であるから当たり前の話かもしれない。

しかし、中国電力は島根県と松江市だけに事前了解を求めたのに、30km圏内の五つの市には報告をするだけにとどまったあげく、事故があれば避難民を受け入れるだけでなく、放射能に汚染される可能性のある広島、岡山を含めたその周辺自治体へは配慮もないわけである。

もっと言うと事故が起きれば中国地方だけの問題ではなくなるのは、福島第一原発によってもたらされた食品の汚染や、放射性廃棄物の拡散を見れば明らかであるし、海から世界に向けて放射能を撒き散らすことになることももはや周知の事実である。

そんな代物が、日本の片隅で着々と完成を待っているのである。

狭い日本の・・・

島根原発を初めて訪れてまず思ったことは、

「こんな良い所に」

であった。

日本海の荒波に侵食された壮大な岩壁が入江となって海岸線を彩っている。絶景である。そこは鹿島町片句。ワカメが美味しいらしい。原発の目と鼻の先には漁村の懐かしい風景がある。

原発の近くには原子力館があって、原発と美しい景色を一望することもできる。原子力館のなかは三連休と言うこともあって親子連れで賑わっていた。子供向けの催事も充実しているし、入館無料であるから観光には悪くないのだろう。六ヶ所村の同様の施設を訪ねた時は僕以外にはだれもいなかったが、ここ島根原発は松江の中心部から近いのでアクセスがよい。良いのか悪いのか。

物産コーナーには地元産の大豆と米を使って作った味噌など、とても良い商品が販売さていた。それだけになんともいえない気持ちになる

これを書きながら六ヶ所村の情景が脳裏に浮かぶ。とても美しい桃源郷のような場所であった。そういえばニセコにいる時はニセコ連邦の雄大な尾根上から眼下に広がる日本海を見下ろした。海岸線に見える泊原発の原子炉建屋だけが余計だった。

福島を想っても、その他原発立地を想っても、どこも美しい自然の残っている所にある。美しい自然が残ると言うことは人口が比較的少ないことの表れでもある。皮肉にもその結果原子力発電を引き寄せてしまった。

自然が都市化によって失われるのと、原発によって蹂躙されるののどちらが良いのかは僕にはわからない。

そしてまた新たな原子力発電所が現に作られているのである。いまこの文章を打っている場所から60kmほど離れたところで。なんだか実感がわかない。ありえないとも思う。福島第一原発事故がありながらの新しい原発なんて僕にはさっぱりわからない。

忌野清志郎の歌が思い出される。

「人気のないところで泳いだら、原子力発電所が建っていた。さっぱりわかんねぇ、何のため?狭い日本のサマータイムブルース」

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百姓2.0/自給リスト(自足に限らず);野菜、米、塩、味噌、建築、トイレ、経済、国家、獣肉(拾い物)、書籍、映像、音楽 etc /自著『旅をふりかえる旅』https://amzn.to/2Wb1mNs、『下らない生き方』https://amzn.to/2ZEjgKf /
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