タヌキの毛皮を脳みそを使ってなめす

以前の記事でロードキルタヌキを拾ってきたこと、そしてそのタヌキを調理して美味しく食べることについてご紹介しましたが、最後にその美しい毛皮もなめしてみることにしました。

動物の皮や毛皮をなめして革にするには、クロムや植物タンニンを使った方法が一般的ですが、今回は初めてということもあり、そのタヌキの脳みそを使った「脳漿(のうしょう)なめし」にトライして見ました。そのすることで余すことなくタヌキを利用できますから。

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余計な肉と油を取り除く

なめしの工程は、タヌキを解体するところから始まります。今回が僕にとって初めての解体だったので、ネットで予習したり、以前見学したときの記憶を頼りにナイフを入れました。

精度さえ気にしなければそんなに難しくありません。内臓は張りがあって丈夫なので簡単には破れませんし、肉と皮の間や、肉の部位の間など、ナイフを通すべきところはナイフが通りやすいところです。

タヌキは肉と毛皮の間の皮下脂肪がとても分厚い。毛皮の側には余分な脂肪や肉は残さないようにして出来るだけ肉の方に残したいのですが、初めてだとこれが難しいです。

さて、毛皮に残してしまった肉や脂肪(フレッシュレイヤー)はナイフで削ぎ落としていきますが、木の板に釘で打ち付けて毛皮をピンと張った状態でやると良いでしょう。僕はタヌキを拾ったのが不意打ちで、段取りも準備もうまくできず、板に打ち付けることなく地べたで作業しましたがとても苦労しました。端っこを踏みつけてもう一方を引っ張りながらナイフでゴリゴリ。

ナイフを斜めに当てて削ぎ落とすのですが、なかなか力のいる上に、ちょっとづつしか取れない途方も無い作業です(下手だからというのもあります)。ちょっとナイフの角度を間違えたり、力が入りすぎたりすると削りすぎて反対側の毛が見えるまで貫通してしまいます。

ナイフはすぐに鈍るので適宜研ぎながら作業したほうが良いことに気づいたのは作業の後半ですが、ゴム手袋を装着しながらナイフを研ぐのは難しく、結局手袋に穴を開けてしまいました。全ての工程を素手でやったほうが間違いなく安全ですが、衛生面を考えると悩ましいところ。

フレッシュレイヤーを取り除いた部分は白い。それ以外の部分はまだ作業が足りないということになりますが、大部分は取り除かないとなめし液が浸透しません。顔のあたりや端っこは特に作業がしづらくフレッシュレイヤーが残ってしまいますが、後からでも修正できるので出来る範囲で良いでしょう。

皮の内側を洗う

タヌキのように皮下脂肪が多い動物の毛皮を鞣す際は、皮の内側を洗剤で洗って余分な脂肪を取り除いたほうが良いそうなのですが、僕はこの工程を飛ばすことにしました。

毛皮なめしの参考にしたサイトでは合成洗剤でゴシゴシ洗っているのですが、僕は合成洗剤は使いたくないし、そもそも昔ながらの石鹸や、自然洗剤であったとしても先住民だったら使わなかっただろうと勝手に想像したからです。

しかし脂肪分が残っていると次の工程でムラになったり、乾燥の際に油が浮き出るそうなので、洗剤以外の方法もあるのかもしれませんが、自分でやる分には売り物でもないので良しとします。特に今回は脳みそを使ったワイルドななめしなので、出来るだけワイルドな方法で作業を貫徹したいというのもありました。

ちなみに皮の内側を洗浄する際は、毛皮の側は水で濡らさないほうが良いそうです。水がつくと毛が抜けやすくなって毛皮の品質が落ちるからだそうですが、ネットで調べてみると毛皮も一緒に洗剤で洗っている人もいました。

僕の場合は上昇する気温への対策として解体の時にタヌキに水をかけていたので既に濡れていたのですが。

なめし液(脳みそ液)につける

ここで脳みそが登場します。脳みそで毛皮をなめす場合、必要な量の脳みそはその動物の脳みそで良いそうです。

頭蓋骨を鉈で割って取り出したタヌキの脳みそは10cm×5cm×5cm位。

頭蓋骨自体はそんなに大きくないのに、その中にびっしり脳みそが詰まっているのは驚きました。タヌキは溜め糞をしたり、狸寝入り(擬死)をするので非常に頭が良いのでしょう。

考えてみれば動物の種類に限らず本物の脳みそというものを見たのは初めてではないかと思うのですが、これがとても美しいのです。グロテスクだからと目を背けるのは失礼ではないかと思うほど美しい。これはタヌキを解体している時から思っていたことではあるのですが。

さて、まずは脳みそを少量の水で煮立てるのですが、僕は誤ってすでに煮立ったお湯に脳みそを入れました。しかし結果は良好です。そして拾ってきた棒で脳みそをよく潰して細かくします。

細かくなった脳みそをタヌキの皮の内側にしっかりと塗り込んでいき、ビニール袋に入れて一時間ほど浸けておきます。

一時間ほど経過したらタヌキの皮をタライに入れた水ですすぎます。どっちみちここで毛は濡れますね。その時タライに溜まった脳みそ液は再度使用することになりますので取っておいて下さい。

乾燥とストレッチ

毛皮は満遍なく乾かしたいのでできるだけ広げて干すと良いです。

そのまま乾燥させただけでは硬い板のような状態になってしまうので、ストレッチをして繊維を断ち切ってやる必要があります。

この作業はよく湿っている状態でも、乾いてしまってからでもダメで、その中間の半乾きの状態でやる必要があります。

毛皮の場所ごとに乾燥の具合が異なるので、半乾きになったところからストレッチを開始します。作業しているうちに他のところも少しづつ乾いてきますから。

両手で引っ張るようにして伸ばしたり、足で踏みつけて引っ張ったり、雑巾を洗うようにぐしゃぐしゃに揉みほぐしたり、木の棒に皮の内側をゴリゴリ擦りつけたりして徹底的に引き伸ばします。本気でやっても破れません。

伸ばせば伸ばすほど皮がしなやかになってくるのがわかります。

伸ばし始めたら没頭して一時間くらい軽く経過してしまいます。やればやるほど美しくなります。

また、まだまだ濡れているところなどは再びナイフを使って余分なフレッシュレイヤーを取り除きます。フレッシュレイヤーが乾いたところなどはガチガチに硬くなっているので軽石やヤスリなどで削ります。

フレッシュレイヤーが取れたところも軽石でゴリゴリすると良いストレッチとなってしなやかさが増してきます。

再び脳みそ液につける

最初の乾燥ではフレッシュレイヤーが取りきれてないこともあり、まだまだ皮も固いので保存しておいた脳みそ液を使って皮の内側を湿らせます。

そして再び生乾きのタイミングを見計らって皮をストレッチします。

この脳みそ液で皮を濡らす工程を何度も繰り返すと質が落ちてしまうので、2回目で終わらせるのが良いそうです。とくにタヌキの皮は薄いので。まだなめしが足りないと判断すれば3度目を行うのも良いでしょう。

僕はとりあえずは初めてのなめし作業だし、他に予定があって作業もできなかったし、かつ、誰かに販売するわけではないので2回目で終了としました。

これで内側の皮は革となり立派な毛皮となりました。

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スモークする

スモークしていない革は水に濡れると固くなってしまうそうです。このタヌキの毛皮をどんな用途に使うかはわかりませんが、焚き火で調理する際に煙の当たるところにぶら下げておきました。

集中的にスモークすれば、表と裏と一時間づつで済むようなのですが、風向きによって煙が当たったり当たらなかったりしながら適当に放置していました。別に売るわけではないですから。

完成

毛皮のなめしは初めての体験でしたし、洗浄の工程も飛ばしたし、フレッシュレイヤーの除去もあまり上手く出来たとは思っていませんでしたが、結果としては毛もふわふわで、革もしなやかに仕上げることができました。

仮に失敗したとしても、ここまでやれば死んだタヌキも本望だろうという想いで素人ながら作業しましたが、それなりの物にはなってくれました。毛皮や革は最低限腐らない状態にすれば良いわけですから、失敗を恐れずトライしてみることが大事でしょう。

一点あげるとするならば、今回はいろんな予定の合間にストレッチ作業をしたため、乾燥具合をうまくコントロールできませんでした。それが原因かはわかりませんが、革の仕上がりが波打ってしまいました。見た目は固そうですが、実際は柔らかいです。

ただ、脳みそを使った脳漿なめしは今回の文章からも想像される通り、衛生的な作業ではありません。バクテリアを繁殖させることで毛皮をなめしているので、素手で作業をすると健康に害を及ぼす恐れがあると、以下のサイトが教えてくれています。

脳漿鞣しでおこる健康被害

毛皮の乾燥状態を見ないといけませんから、僕はストレッチの作業を素手で行いました。結果としては健康に害はありませんでしたが、何事もリスクがあって初めて結果が享受されるということを教えてくれます。

だいたい出来上がりの毛皮は脳みそを塗り込んでから乾いただけの状態ですしね。

挑戦される方はこの点を肝に銘ずる必要があるでしょう。

あとがき

タヌキからすれば毛皮を活用されようがされまいが「死んだ」で終わりでしょうが、この不条理な世の中を生き抜かなくてはならない残された側の我々としては、資源を効率よく利用して、地球に対して余計な負荷をかけないようにしたいところ。

毛皮も革もそうですが、あんなに暖かくて、しなやかで、丈夫な素材なんてそうそうありません。これはタヌキのDNAとその一生があっての素材と言えます。

山中で生涯を終えて大地に還っていくなら次の生命として循環していくわけですが、おびただしい量のタヌキが日々車に轢かれて死んでいき、そして彼らはゴミとして焼却されていくわけです。要は資源を捨てている。肉だって食べられる。

モノや食料を大量に生産している一方で、肉にも毛皮にもなるタヌキは捨てられていきます。タヌキの毛皮はこの不条理な世の中を象徴していると言っても良いのではないでしょうか?

取らぬ狸の皮算用という言葉があります。

まだ手に入れる前から、そのあとのことを計画することを意味しますが、それだけタヌキの毛皮は昔から利用されていたことが伺えます。ふかふかしていて非常に上質ですから。

動物愛護の観点からは毛皮は槍玉に挙げられがちです。確かに毛皮のためだけに動物を生産するのは良いこととは思いませんが、その肉まできっちり食べればどうなのでしょう。まああまり肉として美味しくないから流通しないのでしょうが、活用方法はあるのではないでしょうか?例えばペットフードとかにはなるんじゃないでしょうか?

それが可能だとしたら、もはや牛肉と牛革、豚肉と豚革なんかと違いがなくなります。タヌキ肉とタヌキの毛皮。

僕だって流通している毛皮を買おうなんぞとは思いません。畜産のお肉だってたまに食べるくらい。しかし毛皮はその素材の素晴らしさゆえに古くから利用されてきましたし、狩猟民族からしたら食材の調達と毛皮の確保はセットですからこんなに効率の良いことはないわけです。

それにひきかえ一般的な洋服に使われている素材を見てみると、慣行栽培のオーガニックでないコットンは大量の水と農薬を必要としますし、そもそも農業というものが森林を大規模に伐採することで成立しています。そして動物は住処を失ってしまいます。

化学繊維は有限とされる石油を利用して作られているし、最近は石油製品の破片などの微粒な粒子、マイクロプラスチックが世界中の水資源を汚染して、水や塩、魚などの安全が脅かされています。

森を開拓したり、海を汚すことよりも、動物の命を直接奪うことが感情的に響くのはわかりますが、森や海の生態系が崩れるということはそこに暮らす生き物にとっては命の危険を意味します。

毛皮を礼賛するでも闇雲に拒絶するでもなく、己の視野を広げるよう努力し、何事も慎ましく、かつ謙虚でありたいなとこう思うわけです。

長くなりましたが、とにかく今回のタヌキには「ありがとう」と言いたいです。

タヌキ三部作の一部と二部は以下よりどうぞ。

飛び抜けて多いタヌキのロードキルとその肉を食べるということ。そして命の尊さを考える。

たぬき汁とたぬきの八角煮(レシピあり)

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百姓2.0/自給リスト(自足に限らず);野菜、米、塩、味噌、建築、トイレ、経済、国家、獣肉(拾い物)、書籍、映像、音楽 etc /自著『旅をふりかえる旅』https://amzn.to/2Wb1mNs、『下らない生き方』https://amzn.to/2ZEjgKf /
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