「ナンバ走り」って普通の走り方じゃないの?

Pixabayより

「ナンバ走り」というワードは前々から知っていましたし、右足と右腕、左足と左腕を同時に出すランニングフォームだともおぼろげながら知っていました。

ブックオフに行く度に新書コーナーにある「ナンバ走り」の本を何年もの間チェックしていたのですが、やっと購入してちょうど本棚に並べた頃のこと。

そんな時になんとなしに走っていたら、「僕の走り方はナンバ走りでは?」「むしろ自然なランニングフォームはナンバ走りなのでは?」と思い、早速(やっと)本を開いて確認してみると、ランニング中に僕が至った考え方に非常によく似ていたのでちょっとまとめてみました。

この記事は矢野龍彦、金田伸夫、織田淳太郎共著の『ナンバ走り 古武術の動きを実践する』を参考にさせて頂いています。

ナンバの語源

ナンバの語源を紐解いていくと、大阪の「難波」や、渡来したものとしての「南蛮」からきているという説があるものの、農作業で使われる「田下駄(たげた)」がもっとも有力だそうです。

田下駄とは湿地や水田で足が深く沈むのを防ぐ履物で、板状のものと桶状のものをそれぞれ板ナンバ、桶ナンバとも呼びます。言ってみれば沼地用のカンジキで、佐渡ではカンジキのことをナンバと呼ぶそうです。ちなみに田下駄の方のナンバは「南蛮」が語源だとか。

田下駄(ナンバ)を履いて田んぼ作業をする時、沼地に足が食い込むのを最小限に抑えるためには、体の捻らないようにして、手足を左右同時に出す必要があります。

すなわち、田下駄(ナンバ)を履いた時の体の動きに似ている走り方だから「ナンバ走り」と呼ばれるようになったという説です。このような体の使い方は江戸時代までは普通に見られたそうです。

そんな「ナンバ走り」をしていた江戸時代の飛脚は一日200kmを平気で走ったとか。

ナンバ走りとは

現代社会で一般的に知られるランニングフォームといえば、

手と足の動きは左右交互になり、体を捻らせ、地面を強く蹴り出すというもの。腕を大きく振って、腿は高く上げる。

一方、ナンバ走りは左右の手足を同時に出すことになりますが、言葉通りにそのフォームを実行したらもちろんまともに走れません。

古武術研究家の甲野義紀氏の説明によるとナンバ走りには

・体幹のねじれがなく、走るにあたっての全体の流れがなめらかになる
・見た目に腕を振っていないが、体の中で振っている
・左右交互の従来型の走りは体の中に捻りを生み出し、それがブレーキとなってしまうが、ナンバ走りにはそれがない

相撲取りがする「摺り足」のように重心を低く、体はまっすぐ前を向きながら、ぶれることなく進んでいく。そんな走り方です。

「ナンバな動き」とは

キーワードは

「捻らず」「うねらず」「踏ん張らず」

一般的には大きな力を生み出すためには上記の三要素は必須項目であるように思われますが、古武術に見られる、日本人が長い間培ってきた動きはそうではないとか。

日本人の古来の動き方であるナンバ走りは、日本古来の古武術的アプローチによって解明されます。

ドアが開閉するような、支点を固定して「溜め」を作った腕、腰、足の動きは、それこそ大きな力を生み出すことはできますが、その溜めはブレーキを作り出しますし、動き出した後はコントロールしづらく怪我の原因にもなり得ます。

それに対して骨格の一つ一つを変形させることで複数の支点を作る体の使い方。このような動きを古武術では「体を細かく割る」と言うそうです。そのような体の使い方をすることによって、「骨格の連鎖的運動」という従来の動きから、から「体全体を一斉に動かす」ことができるようになり、余計な力を使わず、かつ、力を無駄にすることなく運動エネルギーに転換することができます。

筋肉主体の一点集中ではなくコツ(骨)を掴んで、骨の動きに筋肉を付いて行かせる。

骨盤であれば仙骨と腸骨
肩甲骨であれば肩関節、鎖骨、背骨
そして肋骨の一つ一つを柔軟にすることで、

体の中から動かすという力の使い方ができるようになってきます。

僕のフォームとナンバ走り

僕が走っていて意識的に自分のランニングフォームを観察してみると、イメージ的には高橋尚子選手みたいな感じで、前腕を左右小さく振るというような、言って見れば「女子っぽい走り方」でした。

右腕は侵攻方向に向かって反時計回り、左腕は時計回りにわずかながら旋回しているという感じ(はたから見てみるとイメージしたのとは違うみっともないフォームという可能性もありますが・・・)。

高橋選手の腕振りはそれこそ綺麗な円を描いていますね。

https://www.youtube.com/watch?v=BaKP492PnKk

瀬古利彦選手も似たような感じですね。これら日本人のトップ選手のランニングフォームは、僕たちはテレビを通してだいぶ親しんでいるのではないでしょうか?

僕の場合はもう少し極端で、左足が前に出ているとき、右手は胸側に引きつけられ、左腕は横から振り出されます。そのため、左足が前の時に左腕も前に出ていると言えなくもないのです。高橋選手と瀬古選手より極端な横振りです。

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そして右手を胸側に折りたたむタイミングが、右足を後ろに蹴る瞬間と一致します。右手を引きつける力で、足を蹴り出しているような感じ。

物理的に足を触ってはいませんが、足の付け根の少し下を腕の力でサポートしながら登り坂を進む、トレイルランではおなじみの走り方に似てきます。ちなみにこの動きナンバ走りの練習法として本書に取り上げられています。

本の中にも「右足が前に出るときに右肩が出る。左足が前に出るときに左肩が前に出る」とありますが、まさにそのような感じです(これも額面通り実行すると危険ですが)。

この勘所は、「対幹部のねじれを極力抑える」ということになります。

そこでちょっと試しにと腕を前後に振って、一般的とされる手足の左右交互を意識して走ってみると、自然と腰の捻りが大きくなって、腿の位置も上がりました。そして足の着地がカカト寄りに。

疲れるのですぐにやめました。

日本に西洋的な走り方(ここでは手足が左右交互に動いて腰を捻らせる走り方を指します)が入ってきたのはイギリスと同盟を組んでいた薩摩藩が最初との説があるそうですが、軍人が履くようなヘビーな靴ではカカトの着地を余儀なくされるはずですから、そこから生まれたフォームなのかもしれません。

そして、再び元のフォームに戻して走ると、足は地面すれすれを小さいピッチで跳ねるように動き、着地は中足部からつま先に。体は前を向いてねじれがなくなり、無駄なエネルギーを使わなくなりました。

サンダルを履いて走ると、このように上下左右にぶれることなく低空飛行で、足裏がバネのように機能する走りになりますが、それこそ草鞋だったりとか、昔の人々の履いている薄っぺらい履物、もっというと裸足で走ると必然的にこのような走り方になります。

薄っぺらい靴では衝撃を足裏から体全体で吸収しないといけないので、カカト着地は到底無理ですし、膝、腰、背骨、肋骨、肩関節、と身体中を固定せず、柔軟にする必要が出てきます。

むしろ腕の振りというのは対して必要ないものだともわかってきます。ただ、何もしないでおくとブラブラして邪魔だから、落ち着くところ、リズムの良いところに置いておくという感じでしょうか。実際、ナンバ走りを実践するチームは、走り方にそれぞれの個性が出てくるようです。問題は肩関節から体幹にかけてどう動いているか。

(※そう言う意味では手足を左右交互に振っていても、対幹部のねじれを極力抑えることが出来ていれば、ナンバ走りがたどり着くところの、無理のない体の動きになると思います)

前述した古武術研究家の甲野氏の説明にあったように、「見た目に腕を振っていないが、体の中で振っている」というイメージ。

そして大地の起伏によって腕振りも変化します。

坂道を下る時はむしろ腕を完全に下に降ろしてブラブラにしてしまっても良いくらい(僕はそのようにするか、肘から下をぐるぐる回したりします)。肩甲骨周辺は下に落ちている感じ。

一方上り坂では必然的に腿を高く上げる必要があるので、腕の振りは大きくなります。腕をぐっと引くときに肩関節も引き上がる感じ。

障害物を飛び越える時などは、下半身の跳躍に合わせて、腕から肩関節もひょいと上がります。

結局のところ、体幹の動きに腕が付いてくると言うのが正確かもしれません。

ウルトラランナーの走り

ここで海外のトップウルトラランナーのランニングフォームを見てみると。先に挙げた高橋選手や瀬古選手のフォームにやっぱり近い。むしろウルトラランナーのフォームの方が、ブレのない、ミニマルな走り方としてナンバ走りの参考になるのではないでしょうか。マラソンはちょっとスピードレースすぎます。

次の動画は『Born to Run』にも登場する最強のウルトラランナー、スコット・ジュレクの走り。

夏場はランニングパンツ一丁で走るミニマリストランナー、トニー・クルピチカ。走りかたもコンパクト。僕のフォームは彼の走り方に近い感じがします。

まとめ

古武術研究家の甲野義紀氏のナンバ走りの要点をもう一度

・体幹のねじれがなく、走るにあたっての全体の流れがなめらかになる
・見た目に腕を振っていないが、体の中で振っている
・左右交互の従来型の走りは体の中に捻りを生み出し、それがブレーキとなってしまうが、ナンバ走りにはそれがない

省エネで、力を最大限前進するエネルギーに変え、長い距離を走るためには、誰しもがナンバ走り(ナンバ走り的と言った方が正しいのかもしれませんが)になるのではないでしょうか?

この記事では4名のランナーの動画を掲載しましたが、動画中の他のランナーを見ても、基本的に上半身にブレはなく、軽快に走っている人がほとんどです(たまに豪快なフォームの人もいます)。力を使ってなさそうなのに、力強い走り。体幹からエネルギーがほとばしっています。

楽に走ろうとするほど、無駄な動きがなくなって、体は軽くなり、気付けば速くなっていて、「ナンバ走り」になっているのではと思います。

ですので、無理のない、「普通の走り」をすれば、誰しもが「ナンバ走り的」になるのではと僕は思います。

ランナーの皆さんは一度客観的に自分の走りを観察してみると面白いのではないでしょうか?

『ナンバ走り 古武術の動きを実践する』では、ナンバ走りの他にもナンバ的な「投げ方」「打ち方」「殴り方・抜き方」「あたる、とる、ターン」「跳び方」「立ち方」「座り方」が、ナンバの動きを取り入れて躍進した、東京都の桐朋高校バスケットボール部での指導法を中心に、イチローや野茂英雄、長嶋茂雄、ロジャークレメンスなどの野球選手、マイケルジョーダン、男子短距離の末續慎吾を例に解説されています。

ランナーはもちろん、スポーツをしている人のみならず、日常生活にも応用できる「ナンバな動き」。日本で古来から見られるこの体の使い方は、日本人である僕たちにはさぞ合っているに違いありません。

「故きを温ね新しきを知る」

この本の出版から15年も経っていますが、ナンバな動きはもっと見直されても良いのではないかと僕は思います。

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百姓2.0/自給リスト(自足に限らず);野菜、米、塩、味噌、建築、トイレ、経済、国家、獣肉(拾い物)、書籍、映像、音楽 etc /自著『旅をふりかえる旅』https://amzn.to/2Wb1mNs、『下らない生き方』https://amzn.to/2ZEjgKf /
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