不耕起でよみがえる 岩澤信夫

田んぼを耕さず、冬から水を入れるという、これまでの稲作りの常識を覆す「冬期湛水不耕起移植栽培」を考案した岩澤信夫氏の著。僕は現在稲作二年生で不耕起の自然農をしているが、冬期湛水を実践したくこの本を手にした。知人も何人かが既に実践している。

いかにも専門書のようであるから、田んぼをしている人だけが読むべき本かと思ったら全くそうではない。この本は米作りの指南書であると同時に、いかに田んぼ作りによって生態系の循環を取り戻すかというネイチャーライティングだ。むしろテクニカルな農法云々より、稲作りと環境との因果関係について重点的に語っている。米を食べて暮らしてきた僕たちは、稲作の実態と、機械と薬に頼った農法について目を通しておくべきだろう。

それでいて農哲学的なところに終始するわけではなく、現在慣行農法を営んでいる一般的な米農家が生業として実践できることに重きをおいているのだ。冬期湛水の理想とするのは無農薬だし、不耕起栽培ではあるが、農家の事情を鑑みながら、少しの除草剤や半不耕起などを提案する柔軟さがある。1か10かみたいな厳格さでは変化を受け入れてもらうのは難しい。そう、僕はこの本を革命の書だとも思っている。

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しかしこの農法を正しく実践できれば、トラクターで何度も耕して、除草剤や殺虫剤を使う慣行農法の米作りに匹敵する収量を、耕さず、農薬も必要なく、うまくいけば全くの無除草で達成することができるという。無農薬イコール商売にならないという前提はここにはない。岩澤氏は商売としての稲作を忘れてはいない。

収量は別にしても、米のうまさが違うのは不耕起栽培を経験している僕は知っている。それに不耕起だと、東北の米農家のほとんどが全滅した過去の冷害の年でも安定的な収穫を見込むことができるのだ。その肝は丈夫な苗作りにあり、それを耕さない硬い大地に植えることで、野性の力を引き出す。

そう、野性の力を引き出すのだ。岩澤氏は本書のまえがきでこう書いている。

「みなさんは農家が田んぼでおコメを作っているものだとばかり思っていませんか。ところが私は「農家におコメは作れない」と思っています。「おコメを作っているのはイネ」なのです。」

人間ができることなんてそのサポートくらいなもので、イネのタネにはイネが成長するための情報が全てインプットされている。どんなに僕たちが頑張っても、大根の種から稲を育てることはできない。

そのサポートが耕さないことであり、苗の作り方や水の管理なのだ。

「田んぼの水がきれいになっていたり、生きものたちが田んぼの土を耕してくれたり、自然に堆肥や肥料を作ってくれていたりと、20年以上、毎年、不耕起の田んぼではワクワクする大発見があるのです。」

農薬も肥料もいらないのは、生態系豊かな田んぼ作りをすることで、そこに住む生命が農薬や肥料の代わりをしてくれるからだ。外からわざわざ追加しなくても、田んぼの中で完結する。生命の循環を取り戻すことができる。そんな農法なのだ。

来年の米作りから冬期湛水で米作りをする予定。さてうまくいくか楽しみだ。


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百姓2.0/自給リスト(自足に限らず);野菜、米、塩、味噌、建築、トイレ、経済、国家、獣肉(拾い物)、書籍、映像、音楽 etc /自著『旅をふりかえる旅』https://amzn.to/2Wb1mNs、『下らない生き方』https://amzn.to/2ZEjgKf /
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