抱き麹の作り方。麹は我が子のように抱きしめて作る。

実際に僕が抱いて作った「抱き麹」

味噌、醤油、酢、日本酒や甘酒はもちろん、一斉を風靡した塩麹の原料でもあるのが「麹(こうじ)」または「糀(こうじ)」。発酵食品は腸内環境の改善に寄与するとして広く認知されていますが、我が国の伝統発酵食品群は麹の存在無しでは考えることはできません。

「こうじ」の語源は発酵を意味する「かもし」が転化したとする説や、「カビタチ」の音が変化したとする説がありますが、いずれにせよ、麹菌(コウジカビ)が日本の発酵文化を支えていたことは、その多様な用途からも見て取れます。

昨今の発酵食品ブームは、味噌、甘酒、塩麹などの手作りする波を引き起こしましたが、麹そのものを作るとなるとなかなかハードルが高いように思えます。麹自体はそのまま食べるものではなく、発酵の起爆剤としての使い方ですから、そもそもイメージが湧きづらいというのもあるでしょう。

僕が関わった初めてと2度目の味噌作りに使用した麹作りはどちらも失敗しており、個人的にも難しいイメージが刷り込まれていました。その時は結局、市販の麹を使うことになったのです。

僕はその麹作りに関わりませんでしたが、何度も経験して慣れた人がやっても失敗しうる。失敗した麹は、結果としては空気中の納豆菌をキャッチして、納豆臭のあるお米になりました(食べました)。納豆菌は強いので、麹屋さんは代々納豆は食べないとか。

さらに麹作りを難しく、かつ面倒としている要素が温度管理です。麹菌の発酵のためには米を32〜36度に保つ必要があります。それを湯たんぽやコタツ、クーラーボックスなどを駆使して、温度計で測りながら、48~72時間も管理しないといけない。熱すぎても、冷めすぎてもダメ。

ちなみに納豆菌の活発な温度が少し暑すぎる40度前後なんですね。

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人間は36度の熱源

前の段落にある「米を32〜36度に保つ必要があります」と、タイトルの「抱き麹」という言葉ですでにピンときた方もいるかもしれません。

そうです、

人間が米を抱きしめていれば「米を32〜36度に保つ」のは簡単じゃないかということです。

何しろ人間は36度の熱源です。

登山などをしている方は、この熱がいかに貴重で尊いことは肌でわかっていることでしょう。この熱を有効利用するために、衣服のレイヤリングをしたり、濡れた服を着たまま乾かしたり(着干し)します。着干しの乾燥スピードには驚きます。何しろ36度を超える暑さなんて、不快な真夏の温度のそれですから。

登山なんかしないからわからん、という人も、満員電車などの人がひしめき合った空間を想像してみてください。暑いですよね。または、人でも猫でもいいですが、生き物と一緒に布団に入った時のこと。湯たんぽなんぞより快適ですね。冷めませんし。

この人間が発する36度の熱を使って麹作りをすれば、難しい道具を使わなくても、お米の温度管理が容易にできるというわけです。冷めすぎたり、熱くなりすぎたりしたら、すぐに肌感覚が教えてくれます。ぬるい風呂くらいなら38度、ちょうど良い風呂くらいなら40度、少し暑い風呂なら42度くらいと。

一般的な麹の作り方

今回の抱き麹作りでは京都の「菱六さん」の種麹を使用しました。

 

その種麹を販売している「かわしま屋さん」が公開している麹作りのレシピを参照させていただきますと、やるべきことは10個です。

1. お米を洗う
2. 洗米したお米を水に漬ける
3. 洗米したお米の水を良く切る
4. お米を蒸す
5. 蒸したお米に種こうじをふりかける(種付け)
6. 保温する
7. 発酵し温度が高くなった麹をほぐす(麹の手入れ1回目)
8. 麹の手入れ2回目
9. 麹の手入れ3回目(発酵具合によっては4回目の手入れも)
10. 麹の完成(出麹)

米麹のつくり方(かわしま屋)より

 

このページにおける麹作りを参考にさせていただきながら、以下に、僕が行った抱き麹作りの工程を記したいと思います。

お米を蒸す

お米は炊くのではなく蒸します。

お米は普通にといで、浸水します。通常炊飯する時よりも長く、「春・秋は6~12時間、夏は3~5時間、冬は15~20時間程度が目安」とのこと。

夏に12時間、冬に24時間ほど浸水している人もいるようなので、玄米を炊くときのようにしっかり浸水を心がけるのが良いと思います。

そして、浸水の終わった米はザルにあけて2〜4時間水切りすることで蒸しあがりを均一にします。これまた他のサイトだと1時間という人も。しっかり水が切れれば良いということでしょう。

そして強い蒸気で1時間ほど蒸せばお米の準備が完了です。蒸し加減はお米ひとつまみをひねりつぶして、簡単に餅が作れるくらい。これはひねり餅と呼びます。

種付け

蒸しあがった米はトレイなどに広げて、水気と熱を飛ばします。しゃもじで混ぜたり、手を使ってひっくり返したり。そして温度が36度〜40度になったところで種麹を混ぜ込みます。

できるだけ均一に振りかけて、しっかり全体に行き渡るように混ぜ込みます。米を冷まさないように素早く作業します。

さて、ここでも温度計を使って正確な温度を把握するのもよしですが、36〜40度という温度を把握する能力は基本的に備わっていると思います。ので、肌感覚に任せて、人肌より少し暖かく、お風呂よりはぬるいくらいの温度として判断しても良いのではと思います。多分その方がその後の米を抱く作業との一貫性が出てくる。

今回、麹を10kg仕込むのに使った種麹は20g。種麹の量は今回参照させていただいているレシピのページでも参照できますが、1合の米に対し、種麹が0.1〜3gと幅広いのです。上手にやれば少量の種麹で済みます。言い換えれば種麹が多いほど成功率が上がります。

そして、種付けが済んだらお米を力一杯まとめて綺麗な布で包みましょう。

保温

さて、ここからが普通の麹作りと抱き麹で作りでやり方の変わるところ。。

前者が、湯たんぽやこたつ、クーラーボックスなどを使って温度管理をする一方、後者は抱きかかえておくだけです。

前者が時々温度計を使って米の発酵状態を診る一方、後者はお腹に伝わる熱で判断します(まあ、温度計を使っても良いのですが)。最適な温度は32〜36度。

この温度を保つために、麹を腹に巻きつけます。布などで。そして出来上がるまで48〜72時間生活を共にするというわけです。今回は10kgの蒸米を男三人で分けあったので、一人約3.3kg。まさに赤ん坊の重さ!まるで妊娠したようなお腹になります。そして、まるで妊婦のようにお腹の麹を育て上げるわけですね。

これがまた腰に来ます。ちょっと何かすると疲て腰掛けたくなる。麹の温度が上がる上がらないに関わらず、お腹に巻きつけているだけで暖かいし(暑いし)。そして寝苦しい(笑)。わずかながら妊婦さんの大変さを体験できます。そして本当に我が子のように可愛くすらなってきます。

これは冗談抜きで世の男性諸氏に体験していただきたいものです。抱き麹を経験したら、妊婦さんの荷物は持ってあげたくなるし、電車で席を譲りたくなるでしょう。きっと優しさが増すと思います。

まあ、3kgというのが少し多いのですが。1kgくらいでやるとだいぶ気楽です。

麹を均等に温めるためにも、時々お腹に当たる面を変えましょう。

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手入れ

種付けをした蒸米を抱きかかえていると、18〜20時間で甘いお酒のような香りが立ち上ってきます。お腹の方からほんのりと。これは麹菌が活発に活動し始めた証拠です。

発酵の過程を常に一番近い場所で感じることができるのも抱き麹の魅力ですし、麹作りにおける管理を簡単にしている理由の一つです。

このあたりで麹の温度は40度近くに上がっていることでしょう。触ると発酵熱が出ているのを感じ取れるはずです。

一般的にはここで「手入れ」と言って、蒸米の包みを開けて米をほぐす作業を行います。発酵中の蒸米は塊の中心ほど熱くなりますし、一方周りにあるお米は蒸発により乾いて行きます。それを均一にする作業が手入れです。

また、麹菌の発酵には酸素が必要ですので、混ぜることで菌の活動を活発にすることができます。手入れの作業に時間をかけると麹が冷えすぎてしまいますので、ささっと済ませなくてはいけません。

手入れの作業はその後も2回、3回、場合によっては4回と繰り返していくと、参考のレシピでも記載されていますが、僕が今回作った抱き麹ではお腹に抱いていた2つの包みのうち、一つは一度だけ手入れをしたものの、もう一つは一度も開けませんでした。

それは、お米を包んでいたサラシが手ぬぐい的な形だったために、手入れの際にお米がこぼれ落ちてしまうのを嫌って作業を端折っただけなのですが・・・

ただ、結果的にはちゃんと美味しい麹になりましたので、自己責任で手入れなしにしていただいても良いかもしれません。自己責任で。

この頃にはすでに蒸米のデンプンが発酵により分解されてブドウ糖になっていきます。ですので試食すると甘いです。その味はまさに栗。麹菌はこのブドウ糖を餌として増殖を続けて行きます。

引き続き管理

抱き続けて24時間以上たってくると、お腹に面している方はだいぶ熱くなってきます。40度くらいに上がっているのがお腹へ伝わる熱からよくわかります。

さらに時間は進んで36時間くらい経つともう抱いておく必要はないくらいに暖かくなります。目の着くところに寝かせて置いて、時よりひっくり返してやるだけで十分かもしれません。やはり床に面している方が熱くなるのです。だから寝返りをさせてあげる。

布団で麹と一緒に寝ているときも、油断すると熱くなりすぎてしまいます。僕はたまたま大量発生した蚊に起こされては麹の面倒を見ていました。

完成

種付けから48時間を経過したところで、三人のうちの一人が完成。僕はさらに一晩おいて60時間くらいで完了とし、もう一人は70時間弱で完成となりました。

人の体温はそんなに違いはありませんから、麹を包んでいる布や縛り方、寝ている時の管理方法、日中の生活環境、などなどによって出来上がりが大きく変わってきます。これもまた麹菌という生命を扱っているということで、赤ん坊を愛でているようで格別なのです。

出来上がった麹は白い菌糸がスポンジのように広がって米が塊となります。これは破精まわり(はぜまわり)と呼ばれしっかり麹ができている証拠です。

完成に向けては発酵開始に見られてアルコール的な匂いではなく、マイルドな甘い香りへと変化しており、味は栗。これがまた一層甘くなっていて美味しいのです。発酵過程での変化を試食する名目で麹の手入れをするのも良いかもしれません。が、その際は、冷ましすぎに注意しましょう。

そして面白いことに、麹を抱いていた主人によって味も香りも違うこと。みんな同じ場で生活していたとはいえ、三者三様の条件がありますから当たり前ではあるのですが、やはり面白い。そして三者三様の美味しさがあります。それぞれに備わっている常在菌の違いも影響を与えているのでしょうか。

一点あげるとすれば、抱いていた麹の塊の外側は水分不足でカピカピになっていて、麹菌の回りが芳しくありませんでした。湿度不足ですね。これは日中もしっかりと布で包んで保湿おくなりしておけば解消しそうですが、外作業は厚着だと熱くて熱くて。冬なんかは腹巻がわりになってピッタリですが。

霧吹きなんかをして湿度を上げてやるのも良いでしょうね。ただ、一度手入れをした時点でもすでに周囲はだいぶ乾いてしまっていたので、多少は仕方のない部分かもしれません。まあ、麹の出来上がりとしては総じて問題なかったので、ちょっとくらい良いのですが。

今回の麹からは少しだけ甘酒を作り、大半はそのまま味噌作りに使用しました。

味噌は早くても3ヶ月以降のお目見えですが、甘酒は最高に美味しかったです。こういう甘酒を飲んだら、スーパーで安く売っている砂糖を添加したような甘酒など全くの別物です。

感想

今回の抱き麹は初めてのトライで、かつ、インターネット上にも細かい情報が出ていないので、試行錯誤での作業となりました。

知人が抱き麹という方法があると言っていたこと、麹の作り方自体はネット上にたくさん転がっていること、そして、人間の体温は36度はあるということ。

知っていることはこの3つ。しかし、個人的には最初から成功は確信していました。むしろ、湯たんぽなんかを使った麹作りの方が面倒くさがりな僕には難しそうだし、人間の体温で温度管理した方が、道具を使うより簡単だろうと思いましたから。

それに道具を使ったら一式を家に置いておかないといけませんが、抱いていれば四六時中どこでも温度調整が可能なのも楽。大変なのは抱いていることくらいですが、これはもはや愛着へと変化して行きます(笑)

とはいえ失敗は許されない状況。何しろ、味噌作りにむけて、大量の大豆は浸水作業を開始しておりました。

抱き麹をしている三人ごとに香りや温度など、麹の発酵具合がことなるので、「オレのは大丈夫か?」と心配になるものも出てくる始末。確かに気持ちはわかります。

しかし結果としては、三人ともちゃーんと麹菌がついて、大成功。

温度だって確実に40度を超えている局面は沢山あったし、日中の作業に没頭しているときは冷やしすぎたりしたこともあったでしょう。寝ているときは細かい温度管理なんて不可能ですしね。

それでもちゃんと出来ました。だからあまり細かく考えなくても良いのだと思います。神経質にさせるような温度計なぞ無い方が良い。熱くなりすぎたら冷ましてあげて、冷めすぎてたら温めてあげて、それこそお腹のなかの赤ん坊が最も快適であろう、人肌の温度を感覚的に保つ努力をすれば良いだけ。

実際僕だって、食事や就寝などの生活の区切りくらいでしかお腹の麹の位置は変えておらず、基本的にはほとんど放置してましたから。

子供のように、甘やかしすぎず、干渉しすぎず、でもしっかりケアして、必要な分だけ守ってあげる。それで良いのでしょう。

全体の感想としては、

「麹を作るのは簡単!」

これに尽きますので、皆さんも是非是非トライして頂いて、発酵の世界に足を踏み入れていただければと思います。こちらの世界は甘いですよ。麹のように。

追記

麹を布に包むのではなく透明の窓付の米袋に入れれば、手入れの際の開け閉めも楽だし、袋に入れたままシェイクすれば麹を簡単に混ぜ合わせることも可能。

 

発酵前の温度を上げたいときはギューっと押し付けるようにして袋を縛る、
発酵後期の温度がどんどん上がってしまうときは袋をブカブカにして空気を入れて縛る、

そうすれば温度管理がだいぶ楽になります。

米袋へは直接麹を入れてOK。

袋は紙なので調湿効果も期待できし取り扱いが一気に楽になります。

手入れはしなくても大丈夫、と、本文で書いていますし、確かに問題なく麹になりますが、手入れに手間がかからないのなら、しっかりやっておいたほうが良いと思います。どうせなら質の高い麹にしよう。

手入れは開始後24時間に一回目、そして開始後48時間での完成までに追加で1、2回。

これでまた抱き麹が身近になりますね。

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百姓2.0/自給リスト(自足に限らず);野菜、米、塩、味噌、建築、トイレ、経済、国家、獣肉(拾い物)、書籍、映像、音楽 etc /自著『旅をふりかえる旅』https://amzn.to/2Wb1mNs、『下らない生き方』https://amzn.to/2ZEjgKf /
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抱き麹の作り方。麹は我が子のように抱きしめて作る。” に 2 件のコメント

  1. 種麹なしで醤油を作りたいと思ってググってみたこちらのブログにきました。
    楽しくて声を出して笑ってしまいました。パーマカルチャーも好きなので、コンポストイレの話も楽しかったです。

    1. 色々と読んでいただきありがとうございます。これからも、笑いはもちろん、スパイスの効いた記事を書いていこうと大変励みになります!

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