廃木材を使って板壁を作る作業に入る、、前に、板壁にするに至った紆余曲折について触れておきたい。その紆余曲折に興味のない方は、スクロールしていただきたい。
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最初のイメージは土壁
当初は、あわよくば土壁で外壁を作れればと思い、その方法をネットで探していた。周囲の古民家はみんな土壁だし。
youtubeやSNSで話題となったPrimitive Technolsogy(原始技術の意)さんが作る小屋のように、建設地で得られた土から土壁が作れたら最高じゃないか(土壁づくりは5分47秒から)。
しかしこの作り方では日本の湿潤な気候に耐えれるかわからない。
では日本古来の土壁づくりはどうだろう。
日本の土壁は、荒壁(土とワラを発酵させたもの)の上に、中塗り(土と砂とワラ)を重ね、最後に漆喰で仕上げるものだ。
ここで直面した問題は、漆喰には消石灰を使うということだ。これはホームセンターで買っても幾らもしないほど安価なものだし、正真正銘の天然素材だ。しかし、元をたどれば山から切り出した石灰岩。使わなくて済むなら使いたくない。何しろ山容を変えるほどに削りまくるのだ。
と、思っていると消石灰の代わりに牡蠣殻などの貝灰を使うこともできるようなのだ。ここ広島は牡蠣殻はいくらでもある。それを焼いて自作できないでもないが、漆喰にするほど細かくできるだろうか、それに燃料もだいぶ食いそうだ。貝灰くらいならホームセンターで買ってもいいかななんて思い始めていた。
しかしここで問題発生。
荒壁を作るには(適切な)土とワラ、水を混ぜて数ヶ月発酵させる必要があるのだ。そんなに待っていられない。
自然建築と言えばCob(コブ)
ならばと思いついたのがCob(コブ)だ。
コブは砂、土(粘土)、ワラを水という、その辺にあるものを混ぜて作る現代自然建築の代名詞的存在だ。
アメリカはポートランドでで少し見学&体験をさせてもらったが、これなら発酵の手間もいらないし、日本の土壁のように竹小舞という竹を網目に組んだ壁下地を入れる必要もない。まあ、それくらい分厚く作るのだが。
すると次に問題になるのはどこから材料を調達するかだ。
土は掘ればすぐ手に入る。が、砂はどうだろう。
砂といえば海や川、そして山にも山砂がある。ホームセンターで買えば激安だ。そりゃそうだ砂なんてそこら中にある。と思ったら大間違いなのが、この現代社会の不可思議なところだ。
実は世界中で砂がなくなってきている。それはもちろん開発につぐ開発。コンクリートを作るには砂が必要だからだ。
砂のために生態系は破壊され、インドネシアの小さな島は海底に沈み、森林はなぎ倒されている。
天然資源の中でも、空気と水を除いて最も消費しているのが砂なのだ。
全世界で年間に採取される砂や砂利は400億トンに達しているが、それは全ての河川が年間に運んでいる土砂の量の2倍にも及ぶそうだ。
ここ日本においても瀬戸内海に面した県などでは海砂の採取を禁止になっている。
砂は元をたどれば岩石が細かくなったものだ。そこには測り知れない年月が内包されている。
そう考えると木材というものはすごい。植樹から四半世紀〜半世紀で建材として使えるようになる。人為的に生産に介入できる。しかし、砂はそうはいかない。地球の営みに任せるしかない。
もちろん無駄遣いが禁物なのは共に同じだ。しかし、生産できる、かつ、その期間が短いという点で、木材を使うことの意義というものを改めて痛感した。もちろん行きすぎた森づくりへの介入には肯定的な立場ではない、というのは今までの文章を読んでいただければわかって頂けるだろうが。
バキバキの廃材で壁を貼る
上記のような理由で板壁にすることにしたのだが、板壁を敬遠していた理由もある。
それは、機械を使わなければ板を作ることはかなり難しいことだ。たまたま廃材をもらったから板があるものの、板を自給しろと言われても簡単にはできない。
チェーンソーで製剤もできるが、上質なチェーンソーにアタッチメントが必要だ。
もちろん丸太を楔で割ることもできるし、地道にノコギリで作ることも理論的には可能だ。
しかしどちらにせよ薄い板はさらに難易度が高いし、均一な厚みの板を作るなんてなおさら難しい。そういう意味では床板みたいな分厚い板はそのうち丸太から作ってみたいとは思っているのだが。
この自給が困難という点がずっと引っかかっていた。たまたま廃材があるからできるが、なかったらどうするつもりなのだと。自給能力を高めていくことが僕の暮らしのテーマなのだ。
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その点においては土壁はいい。車で近所を回れば採取可能だろう。しかし、世界的砂不足が頭をよぎる。そんなことばかり気にしてたら何も進まないだろうという自分ツッコミもある。
そこで基本に帰ることにした。「既にあるもの」を最大限利用しようと。
すると今は廃材がある。そして、放っておいたらどんどん使い物にならなくなる。では、この板を使おうではないか。

廃材。整理前。
廃材の板に新しい命を吹き込むということは、かつて製材したときに使ったエネルギーをも再利用できるということになる。そしてこの「製材」は自分ではできない技術だ。このエネルギーを無駄にするのは勿体無い。
持っているのはバキバキの廃材板
実は板壁にするのを敬遠していたもう一つの理由は、もらった板のほとんどに割れ目が入っていることだ。この廃材をくれた建設会社の人も「焚き物にしかならんだろう」と言っている代物。
元々オーセンティックな外観の小屋作りを目指していたので、「これでは外壁は難しいな」というのが第一印象であり、それが土壁について調べ始めた理由となった。本当は、知らぬことだらけの土壁と違って、板壁の方がイメージできるし楽なのだが。
しかし割れているし、反っているとはいっても板は板だ。厚みは均等だし、とても貴重な資源である。焚き物で終わらすには勿体無い。これをどうにか壁にしてやろう。
壁張り
雨対策とか密閉性とか色々と考えてきたが、もうそんなものは二の次だ。もう、いかにして、手持ちの廃材を壁にするかしか頭にない。その中で少しでも雨に強ければ良いだろう。ということにした。
とりあえず板を縦に並べて貼っていく。
すると板と板の間に隙間ができるので、その隙間を埋めるようにして板を被せていく。それだけだ。
ヒッピーっぽい外観にはしたくないと何度も書いていたにもかかわらずこれだ。結局のところ僕はヒッピー的なのだろう。それもこれも「あるもの」を最大限活用せんがゆえなのだ。そしてさらにペタペタ。
そして完成。ちなみにこちら側の面はゆくゆくは薪小屋か何かを増築しようと思っているので、雨対策もそこそこで良いのだ。
小屋の背面も同様の仕上げ。
入り口向かって右側の面は瓦のように下から板を被せながら打ち付けていく鎧張りを採用。それはこちら側から強い風が吹き付けることが多いので、少しでも雨に強い壁にできればと期待してだ。屋根に使った板と同じもので、割れていたり、切り欠きがあるものが残っていたのでそれを使った。
そして端材をできるだけ出さないようにするために、上半分は縦貼りにして、できた隙間にまたまた割れた板を被せた。
今までこの小屋作りを追ってくれてた人は、「きっとお宮的な伝統建築的な建物になるのだろう」と期待していてくれていたかもしれないし、自分でもそう思っていたのだが、結局継ぎ接ぎだらけの、「まさに廃材小屋」といった風情となった。
でもまあ、個人的には周囲の山々や畑とも調和しているようだし、それなりに納得している。板を貼り始めたときは結構ヤケクソっぽくなったし、とりあえず手当たり次第に即興的に板を貼っていったけれども。
最後は建物の乾燥、プラス、材のスモークのために小屋の中で焚き火。西日本の豪雨の湿気がまだ取り切れていないうちの建築というのもあるし、保存している間に廃材にカビなのか腐朽菌なのかがたくさん生えてしまってもいたからだ。
以前も梁と桁にカビか何かがついたのでスモークしている。その時の考察は以下の記事を参照されたし。

ただ燃やすだけでは資源が勿体無いので、ついでに犬のご飯を炊く。なんてシュールな写真なのだろうか。
次は扉を作ろう。
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