さて、前回の記事で作った焼杉の板を使って屋根を葺こうと思うのだが、実は作業前夜にそれまでイメージしていた葺き方を変更する決断をした。
インターネットで屋根の写真を物色し続けた結果、当初は伊勢神宮にある御酒殿(みさかどの)に使われている「大和葺き」と言われる方法を採用するつもりでいた。

伊勢神宮御酒殿(写真は伊勢志摩観光ナビより)https://www.iseshima-kanko.jp/spot/2216/
大和葺きとは、板を縦に並べていき、その並べた板の継ぎ目を覆うように、その上にさらに板をかぶせる形で屋根を葺く手法だ。伊勢神宮の他にも法隆寺で使われているようだ。
しかし、この方法で屋根を葺くのに最後の最後で迷いが生じてしまった。
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というのは以下のような懸念が生まれていたからだ。
・継ぎ目を覆うようにかぶせた板を釘で固定する必要があるのだが、その釘がむき出しになってしまうのを隠す方法が思いつかない。
・水が流れる方向に木の継ぎ目があるので、雨を防ぐために精度の高い建築が求められるのではないか。
・かなり伝統的な葺き方であろうはずなのに実践している人が見当たらない。
etc…
三番目の理由は実に情けない。
しかし現実的に考えた結果、木を瓦のようにして屋根の下から上に向かって重ねながら葺くことにしたのだ。
木の瓦なら実際の建物を見たこともあったし、施工のイメージは簡単につく。一般的な木の瓦はまな板のようなサイズの板を、左右上下に互い違いに並べるのだが、長い板のまま下から上に向かって重ねていったらどうだろうと思いついた。
そのほうが木材を節約できるというのもあった。材料には限りがあるのだ。
破風板(はふいた)と鼻隠しの取り付け
屋根を葺く前にまずは破風板と鼻隠しを取り付ける。
これらは屋根の側面に取り付けられ、風雨が屋根の内部へ入るのを防ぐ役目を持っている。
破風板も鼻隠しも役割は同じだが、雨樋が付く部分を鼻隠しと呼ぶ。この小屋の場合は屋根の背面部分ということになる。
まずは屋根の側面部の破風板を取り付けた。焼杉のマットブラックがなかなかかっこいい。しかし板の幅がそこそこあるのでなんかイカツイな。
それにしても一人でこれを取り付けるのはなかなか難儀だ。任意の位置に持っていっても、釘を打つ前にずれてしまう、というのを何度も繰り返す。板を押さえつけるのに必死だ。最終的には顎を使って固定しながら釘を打ち込んだ。当然顎は焼杉の炭で黒くなった。
そして前面と背面の取り付けも終了。こちらの取り付けを後にしたのは、雨の流れる方向であるから、その方が水の染み込みを抑えられると思ったからだ。
前方の破風板のみ、板の反り返りにより微妙な取り付けとなってしまった。
釘で抑えつけようかと思ったが、下手なことをして板を割ってしまったら面倒なので、諦めることにした。これも愛嬌ということにしよう。
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屋根を葺く
次はいよいよ屋根葺きだ。
まずは地べたで予行練習をしてみる。そして板を重ねる長さを決めた。上の3枚は焼杉が足りなかったのでこれから焦がさなくてはならない。焼杉の作り方は前回の記事を参照されたし。

板の枚数と屋根のサイズを考慮に入れた結果、下になる板の幅14cmを残して上の板を重ねることにした。
あとはこの間隔で屋根下地に打ち付けるだけだ。釘は端にしか打たないので、強度を考えて二本ずつを垂木に向かって打ち込んだ。これらの釘は上にかぶさる板によって隠れることになる。
横から見るとこんな感じ。なんと、思っていたほど格好良くないな(笑)
しかも今更気づいたのだが、横に隙間ができるじゃないか。これでは雨が入るのではないだろうか。なんと初歩的なミスなのだろうか。
しかしもうここまできたからこのまま行ってしまおう。他に案もないし、代替の素材もないし。何か問題が発生したら場当たり的に対処することにしよう。
そして最後の屋根板を葺く前に、破風板にかぶさるように角材を取り付けて、その角材に屋根を打ち付けることにした。下の写真は屋根を上から見ている。上から、角材、破風板、野地板、屋根材。この上に最後の焼杉を打ち付ける。
というのは、最後の釘穴だけはどうしても隠し方が思いつからなかったので、釘をむき出しにするにしても、破風板よりも上にあれば屋根下への雨の侵入を最小限にできるのではと思ったからだ。
なんだかこの屋根は今後も紆余曲折ありそうだが、とりあえず完成して一安心。まあまあ風格ある見た目になった。
それにしても頭でっかちの小屋になってしまったように見える。外壁が付けば少しはバランスが良くなるだろうか。まあそれもこれもその時になればわかる。ということにしよう。
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