コンポストとは堆肥のこと。堆肥とは有機物が微生物によって分解されてできた肥料だ。
日々の生活で排出される「ゴミ」と呼ばれるものを見てみると、生ゴミ、紙ゴミ、プラスチックゴミ、ビンカン、ペットボトル、金属などとあるが、生ゴミ、紙ゴミは家庭で手軽に堆肥化できる貴重な資源なのだ。
もちろんプラスチックから金属ゴミだってリサイクル可能(かと言ってリサイクルにもコストはかかるのでこれらの消費を減らす必要は大いにある)
そのように考えるとゴミとは一体なんだろうか。ゴミが「捨てるべきもの」を意味するならゴミなんてものは存在しない。あえてゴミというなら昨今話題の使い捨てプラスチックゴミぐらいなもので、再利用可能なものはゴミではない。
捨てるというのは一見なんてことのない行為だが、それによって稼働するゴミ処理の費用は我々の税金によって賄われている。ゴミでないものをゴミと言って捨てることに、我々が費用を払っているのだ。
特に生ゴミを捨てるほどバカバカしいことはない。それは生ゴミの大半は水分で形成されているからだ。キュウリの95%が水分。肉なら70%ほど。人間だって60%は水分だ。生ゴミはシンク扱われるがゆえに、それ以上の水分を含んでいることも少なくない。
そんな生ゴミを燃えるゴミで処理しているなんて、こんなバカな話はない。ほとんど水でできているものを燃やしているのだから、そこに無駄が多いなんてことは誰だってわかる。だから生ゴミは特に家庭で処理すべきものなのだ。
そんな生ゴミ始め有機物ゴミを処理するのに必要なのがコンポストだ。前述した通りコンポストは堆肥という意味であって、堆肥化のための容器をコンポスターとか、英語圏ではコンポストビンなんて呼ぶが、ただ単にコンポストと呼ばれることが多いのでそれを踏襲させてもらうことにする。
コンポストは既製品がホームセンターでも売られているが、ちょっとしたDIYで簡単に作ることができる。
車が一家に一台の時代はとっくに終わったが、コンポストは一家に一台あるべきだと思っている。何しろ難しいことはないので、ぜひ実践してみてはいかがだろう。
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コンポストづくり
コンポストづくりなんて大仰なこと言っているが、実際はただ「有機物を積み上げられる枠」と作れればなんでも良い。
僕が作ったコンポストはもともと牛舎の扉だったものをひっぺがしてきて、それを組み合わせただけ。
大きな扉2枚で長編を作って、小さな扉4枚で短編を構成している。これらはそれなりの重量があるので、割れたコンクリートブロック基礎の上に直置きして自立している。
これだけだと隙間が多くて小動物や、飼い犬ですらコンポストを荒らしてしまうので、廃材の板で周りを埋めた。とりあえず左の枠から使うので、使うところだけ完成させた。
廃材を無駄なく使うようにしたらこうなった。
何も邪魔が入らなければ扉だって必要ないのだが、小動物の前に犬が荒らすので扉をつけた。
廃材をこのように組み立てて完成。きっともっとスマートな作り方はあるのだろうが、堆肥が完成するまでは開けることもないのでこんなもので良い。上部を引っかけるだけの簡単な扉だ。
フォークリフトのパレットが手に入るとこの手のコンポストは簡単に作れる。youtubeで『compost pallet』と検索すれば、いくらでも作り方の動画が出てくる。

なぜ3区画あるのか
僕が作ったコンポストは、『Humanure Handbook(人糞コンポストハンドブック)』に書かれいる方法を参考にしている。
タイトルの通り、トイレの汚物も堆肥化することを念頭に入れたコンポストだが、別に普段の生ゴミだけを処理したって良い。
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コンポストが3区画ある理由は、まず左の区画に一年目の生ゴミ、紙ゴミ、汚物などの有機物を積み上げ、2年目に右の区画に有機物を積み上げていく。真ん中の区画には生ゴミや汚物を加えた後にそれらをカバーする為の刈り草などを入れておく。
残念ながら光沢のある紙や、インクの多いカラーの紙などは入れるのを避けた方が良い。大豆インクとかの紙なら問題ないだろう。全ての紙がそうであったら良いのに。
汚物をコンポストに入れる場合、適切に管理されたコンポストでも病原菌を死滅させるために一年の熟成期間を要する。一年間コンポストに有機物を加え続けた場合、最後に汚物を加えてから一年なので、堆肥の完成には丸2年かかる計算だ。
右の区画に一年間積み上げ終わった頃には、左の区画は堆肥として完成するので、畑に施肥すすことで左の区画が空になり、三回目の堆肥づくりをスタートできるわけだ。
もちろん汚物を入れなければ一年熟成する必要がないので、完成次第畑に還してしまって良い。条件次第では一ヶ月そこらで完成するようだ。
コンポストづくりを難しく考えない
パレットも手に入らないし、DIYも得意でないからといって、コンポストを諦める理由にはならない。
そもそもがコンポストは枠も何もなしに地面に積み上げるだけだって機能するのだ。
山型に積み上げるより枠に入れて筒状に積んだ方が中心部の発酵熱が上がりやすいのでベターだが。
ならば、鉄筋を4本地面にさして、ワイヤー式のネットをぐるりと囲むなり、コンパネに穴を開けて針金で固定するなり、手間のかからない方法はいくらでもある。
ホームセンターで地面に埋め込み式の嫌気性コンポストが売っているので、これも選択肢だろう。しかし、行く行くトイレの汚物も堆肥化したいと望むなら、僕が作ったような空気の取り込める好気性のコンポストである必要がある。
雨ざらしで混ぜもしないので管理も簡単
僕のコンポストは前述の『Humanure Handbook』の方法をそのまんま踏襲しているのだが、上からブルーシートで覆ったりしなければ、下部をなにかでカバーすることもない。コンポストの中身をひっくり返したり混ぜたりすることもない。
ただ単に地面に積み上げているだけだ。
最初は分厚目に刈り草を敷いて、生ゴミを入れるたびに刈り草でそれらをしっかりと覆う。そうすれば匂いも虫も問題にならない。
コンポストに必要なのは、湿度、酸素、温度、栄養バランス。これらが満たされることによって微生物による発酵が促され、良質な堆肥となっていく。
湿度
その湿度を保つために雨ざらしにしておく。乾燥地帯では水やりが必要なくらい、コンポストは保水する。
生ゴミや刈り草の水分はどんどん空気中に蒸発していってしまうので、コンスタントな水分供給が必要なのだ。
酸素
このコンポストは好気性発酵、すなわち酸素が必要な発酵である。コンポストを混ぜるという行為は内部に酸素を入れる為と言われているのだが、『Humanure Handbook』の著者ジェンキンス氏はそれは必要ないと言う。
刈り草などの目の荒い素材をコンポストに入れておけば、それによってできた隙間から十分な酸素が供給されるから混ぜる必要は一切ないと。
温度
微生物の働きは温度の上昇と共に高まるのだが、コンポストを混ぜてしまうと確かに一時的に酸素は大量に入ってくるが、コンポスト内部を冷やしてしまい、発酵の邪魔をしてしまうのだ。
特にトイレの汚物を入れる場合は発酵熱を60度にまで上げて、病原菌を駆逐する必要があるので、冷ますのは厳禁。
栄養バランス
炭素と窒素を適したバランスに保つことが、微生物の働きを促進する鍵だ。それによって高い温度でコンポストを発酵させることができる。
食物繊維は炭素ベースの素材。刈り草、枯葉、ワラなど。
生ゴミは炭素と窒素のバランスが良い。
おがくずなんかは炭素が多い。
ベストな炭素と窒素のバランスは20:1~35:1
一般的なコンポストは炭素が多い傾向にあるとジェンキンス氏は言う。それはアメリカの庭が大きくて刈った草などが多いこともあるかも知れない。日本でも田舎暮らしなら刈り草はいくらでも出る。そんな炭素過多のコンポストを解決するのが窒素たっぷりの屎尿だと彼は説いている。
僕はとにかく有機物であるならばなんでも入れると言うスタイルを取るようにしている。特にバランスも考えてないコンポスト一年目のヒヨッコだがうまくいっている。臭くないし虫もいない。
手をかけるほど愛着が湧くのがコンポスト
面倒だからなんでもかんでも燃えるゴミに入らさせてくれ、と、言いたい気持ちもわからないでもない。余計な考え事なんて時間の無駄であると。
しかしそんな行政任せで、地球に負荷をかけるスタイルは、いつかしっぺ返しとして我々の生活を縛り、時間を奪う結果ななるとも知れない。
コンポストは確かに少しは手がかかる。しかし今まで捨てて終わりだったものが、畑の堆肥に変わるだけでなく、環境汚染の因子も減らすことができるのだから。一石二鳥とはこの事。一石二鳥なら時間を節約したのと一緒でしょう。
それにコンポストを作って愛着がわかない方が難しいと言っても良い。何しろ日々ゴミが分解されていっているのが、有機物を入れても入れてもなかなか量が増えないと言う形で目に見えるからだ。堆肥が完成して畑に還すのが楽しみで仕方ない。

コンポストを作ってからこれ以上カサが増えない。毎日生ゴミを入れてるのに。
もう生ゴミを入れるのは楽しみだし、出先の生ゴミも持ち帰るし、人の家の生ゴミも欲しくなるし、食べ物を悪くしてしまっても罪悪感は半減するし(決していい事ではないが)、初めて汚物を入れた時は感動した。
コンポスト周囲は確実に土が肥えてきていて、となりに移植した左からズッキーニ、とうもろこし、きゅうりは他のとこより確実に元気だ。
コンポストが完成して畑に還す時が待ち遠しい。このワクワクは、いざ実践してもらえればわかるはずだ。色とりどりの新鮮野菜が眼に浮かぶ。
こちらの世界は甘い。
一家に一台コンポスト。
是非、小規模からでも。
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